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Valve Index 800時間以上使用レビュー

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はじめに

Valve Indexは長らく在庫切れで手に入らない状況が続きましたが、買えるようになってきました。
ぼくは発売日(2019年11月28日)にIndex本体,Indexコントローラー,Indexベースステーション2.0のフルキットを入手できましたので、それからほぼ毎日、合計800時間以上つかっています。その間に気がついたこと、メリット、デメリットをレビューします。

スペック

ディスプレイ 1440×1600 液晶x2(合計2880×1600)
対応フレームレート 80Hz / 90Hz / 120Hz / 144Hz
視野角 約130°
瞳孔間距離(IPD) 58mm~70mmの範囲の物理的調整
トラッキング VALVE INDEX 1.0および2.0ベースステーション

いやほんと、スキのないスペックです。画質・視野角・音質・トラッキング・コントローラー、VRHMDに大切な要素がすべて現状トップクラス。実際の使用感を細かくレビューしていきます。

画質

解像度はVive ProやOculus Questなどと同じ1440x1600を2枚で合計2880x1600ですが、Vive ProやOculus Questがペンタイル配列の有機ELに対してIndexはフルRGBの液晶です。
スクリーンドア効果を感じずとてもくっきりしていて文字など非常に読みやすくなっています。
ただし色の深さ、黒の沈み込みなど色彩表現に関しては若干劣ります。暗い場所などの場合は有機ELのHMDのほうが闇をより的確に表現できていたと思いますがそれ以外の場所だと気になりませんでした、十分鮮やかに感じます。
また、リフレッシュレートも144Hzまで対応ととてもなめらかにもできるし、逆に設定で80Hzまで落とすこともできるのでPCスペックや自分の感じ方に合わせて柔軟に設定できるのも素晴らしいです。

視野角

Vive/Rift世代の110度に比べると確実に見える範囲が広がっています。左右だけでなく上下の視野角も広がっているように感じます。
HUD(視界固定でHPバー等)が表示されるゲームだと、視界ギリギリ端に見えていたものが中央寄りになっているの感じたりもします(周りが見えるので相対的に)。
ただし視野角はヘッドセットの奥行き調整により大きく変動するので、メガネを入れたり個人差(人によっては近づけると額にぶつかることもあるらしい)によりレンズを前方にスライドさせて使う場合は視野角が狭くなります。
自分の場合は一番近い位置まで顔に寄せられるので、視野角は最大限に生かされとても広い視野を得られています。

音質

一般的なヘッドホンやイヤホン方式ではなく、オフイヤースピーカーが搭載されています。
耳から浮いた位置にスピーカーが配置されている感じです。
音質もかなりよく自然に聞こえます。耳に密着していないぶん、激しく音漏れすることを覚悟していましたが、指向性があるようで思ったほどではありませんでした。
とはいうものの音漏れは普通のヘッドホンよりはするので、気になる場合はイヤホンを使ったほうがいいでしょう。接続できます。
その場合標準のスピーカーは上に上げておけるので邪魔になりません。
また、マイクの音質が非常によいです。VRChatなどでボイスチャットをしていると音がよくなったことをよく指摘されますし、他のIndexの人の声を聞いていても自分でも実感できます。ただ集音性も良いようで、声以外の今までバレなかった音(こっそりお菓子の包み紙を空けたり)もバレたりします。

トラッキング

SteamVR Lighthouseトラッキングです。Viveなどと同じなので同等ですね。
いまや主流となったインサイドアウト方式トラッキング(Oculus RiftS,QuestなどのHMD本体にカメラが搭載されているタイプ)の弱点である背中や頭の後ろもトラッキングするのはSteamVR Lighthouseトラッキングの大きな利点でしょう。
ただし!かなり辛い問題点としてIndex付属のBase Stationの騒音があります。しかもキーーーンという高音のノイズで、かなり耳障りです。
Spectroidというスマホアプリで計測すると1809Hz前後で音がしているのが確認できます。写真上に映っているのがスマホ、下がベースステーション本体です。

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この騒音が不具合である可能性があり、交換されたという情報もあったためSteamサポートに問い合わせたところ、交換対応されましたが、交換品もまったく同じ1809Hz前後の騒音が発生しているし、Indexを購入した他の人にも聞いたところまったく同じようなので、どうやらこういう仕様なようです。
Riftセンサーによるトラッキングやインサイドアウト方式では無音なので、明らかなデメリットですね。
部屋の騒音源としては他にエアコンやPCのファンなどあるわけですが、我が家の環境だとそれらよりうるさいです。
もちろんゲームを遊んでいて激しい音がしているときは気にならないのですが、静かなシーンやロード中などになるとキーーーーーンと聞こえてきて没入感が削がれます。
この音の感じ方は人それぞれであり気にならない人もいるようなので一概に問題とはいえませんが、自分にとってはこれがIndex最大のデメリットに感じています。
もっとも、これはフルセット版を購入したValve Indexベースステーション2.0の話なので、HTC版のベースステーション2.0や、Viveなどからの乗り換えでベースステーション1.0の場合は大丈夫かと思われます。

コントローラー

OculusTouchと同じ表面ボタン数・スティックを装備し、Viveコントローラーと同じタッチパッドまで装備しているという全部入り仕様。
さらにOculusTouchでは3本指までだった指認識は5本指まで拡張され、さらにTouchでは「触ってるか、触ってないか」の認識しかなかったものが「どの程度触っているか」というアナログ入力で判断できる上、「どの程度の握力で握っているか」まで認識するという精密さで現状最高のVRコントローラーといえるでしょう。
対応ソフトだと手の握り具合をかなり正確に持ち込めます。

ただし認識するのはあくまで「指の握り具合」だけで「指と指の開き具合」は一切認識しません、つまりピースサインなどは人差し指と中指を広げることで表現するため、認識しません。これは残念。

そして気になるのがViveコントローラーやOculusTouchには対応しているが、Indexコントローラーには対応していないVRゲームへの対応ですね。
一応デフォルトでもViveコントローラー的な配置が採用されていて、そのままでも遊べますが、せっかくスティックやボタンが搭載されたので使いたいですよね。
これはSteamVRの細かすぎるコントローラー設定が大部分を解決してくれます。
例えばもとのゲームでは「Viveコントローラーのタッチパッド下押し込み」の操作を、Aボタンを押したときに設定したりできます。
設定は正直面倒でUIもわかりやすいとは言えませんが、頑張って設定すればたいていなんとかなります。

しかし一つIndex特有の問題があって、タッチパッドやスティックなどを親指で押し込み操作をしようとすると必然的にグリップを握るハメになるので握り込み入力もされてしまいます。
いくらIndexが手のひらに固定可能なコントローラーと言っても押し込み操作をするときはグリップ部分をグッと握って安定させる必要があります。
しかしグリップを握るという行為そのものが、Indexの場合は入力行為の一つなのです。なので「タッチパッドやスティックを押し込む操作をしたいけどグリップは握りたくない」というときに困ります。
もしOculusTouchであれば、コントローラーを薬指と小指で握って、中指を浮かせて、スティックを押し込めば良かったのですがIndexコントローラは薬指だろうが小指だろうがしっかりグリップ入力がされてしまいます。
ゲームによってはこれが困ることになります。

さらに電池ではなく充電式バッテリーで、7時間程度しか持ちません。一般的にVRゲームはワンプレイ30分程度しか遊ばないとされているようなので問題にはならないのでしょうが、ぼくは連続で8時間遊ぶこともある異常者もしくはVRChat一般人なのでプレイ中にバッテリーが切れると有線で遊ぶハメになります。
OculusTouchは電池式だったので、プレイ中に電池が切れても入れ替えるだけで即座に復帰できました。エネループなどの充電電池を4本用意しておけば充電・交換のサイクルを作れたのでノンストップで遊べました。そもそもTouchは電池1本で20時間持ちますし。
個人的にはIndexコントローラーも電池式がよかったですね。

そして耐久性にも問題がありそうです。


4ヶ月目くらいでスティックが壊れました。保証期間なので交換対応してもらえましたが、この問題は多くのIndexユーザーが体験するありふれた症状のようです。VRChatでよく話すIndexユーザーも軒並み壊れて交換したり不調になりつつあったりします。保証期間中は交換してもらえるのでひとまず安心ですが、安いものではないので、保証が切れたあとのことを考えると憂鬱です。

重さ・装着感

750g程度の重さとかなりの重量級です。Rift/Viveは450g程度だったので、明らかに重くなりました。
しかしヘッドバンド部分の出来がよく、重量バランスも悪くないので数値としてのインパクトほどは重く感じません。
ただやはりRiftの軽さは素晴らしく、Indexに慣れたあとにRiftをつけてみたらあまりの軽さに「水が入ってるつもりのヤカンを持ち上げたらカラだったので異常な速度で持ち上げてしまう現象」が首で発生して首が吹っ飛ぶところでした(嘘)。
ヘッドバンド自体はViveデラックスオーディオストラップのように後頭部のダイヤルを回して固定する方式ですが、バネで締め付ける効果もあるので装着のたびにダイヤルをまわす必要はありません。慣れれば帽子のようにスッとかぶってスッと外せます。
寝具性能は低いです。後頭部のダイヤルが邪魔ですし、ヘッドホンは中空に浮いている状態なので寝返りをうってヘッドホンを下敷きにしたりするとダメージが入るでしょう。

Oculusユーザーの乗り換え問題

ViveユーザーがIndexに乗り換えるのは純粋なアップグレードになると思いますが、RiftユーザーはOculusHomeに別れを告げることになります。
とてもつらい。
個人的に一番つらいのがOculus Dashのデスクトップ画面をVR空間にもっていく機能との別れ。モニタ何枚でも、特定のウィンドウだけでもVR空間に自由に配置できて操作できてゲーム中も表示できて深度も認識して(深度違反を起こさない)違和感なく使えたOculus Dashはほんとうに素晴らしかった。これがもう使えないのが残念でした。
これに関してはOVR ToolkitやXSOvearlayなどSteamVR用のデスクトップオーバーレイソフトがあるので代用していくしかないでしょう。

また、OculusStoreで購入したゲームともお別れ。こんなこと(Oculus以外のVRHMDを購入する未来)もあろうかと、OculusStoreとSteam両方で販売しているゲームに関してはSteam優先で購入していたのだけど、それでもOculusStoreでしか買えない独占タイトルがいっぱいあるんですよね。
そしてこの独占タイトルが非常にクオリティが高い。
しかしこれに関してはReviveというツールがある程度解決してくれました。いくつかテストしてみたが、ちゃんと遊べます。

IndexコントローラーはTouchのグリップボタン的なものが存在せず圧力センサーになっているので、そこに若干の違和感がある以外はスティックもボタンも装備しているのでTouchと比べてもほぼ遜色のないプレイが可能です。

細かい問題点や改善グッズ等

ケーブルが太く、硬く、重い

f:id:bironist:20200716223052p:plain 上がRiftのケーブル、下がIndexのケーブルです。かなりゴワゴワで太いです。普通にケーブルを床を這わせてプレイすると後頭部が引っ張られる感覚があったりケーブルを踏んで痛かったり移動するとたわんで足に絡まってきたりとかなり邪魔になります。
これは天井から吊るすことで解決しました。

 このリールを天井に取り付け、ケーブルを天井に這わせることで上記の問題が解決し快適にプレイできるようになりました。ただ、張力が強いのでリールは6個セットですが最低限の個数だけでつけたほうがよいです。また、通常下に這わせる前提でHMDへのケーブル固定がされているので、釣る場合は結束バンドなどでケーブルを上に逃がすように固定したほうがよいでしょう。

USB充電がめんどくさい

コントローラーの項目でも書いたようにUSB充電方式のため、頻繁にケーブルを接続して充電しなくてはならない上に、差込口が硬くて刺しにくいです。
これはマグネットケーブルを購入することで改善しました。差込口が奥まっていて狭いため、マグネット部分が大きいものは使えないかもしれません。

 これは問題なく使えました。付属ケーブルと比較しても充電速度も問題なかったです。またTypeCだけではなくMicroBの端子も付属しているので、Viveトラッカーと共通で利用できるのも便利です。 

また、充電アダプターにはこういった5ポートのものを使うと、Indexコントローラー2つにViveトラッカー3個同時に充電できるので便利です。 

平たい顔族に優しくない

フェイスプレートが欧米人向けのきついカーブを描いているので、平たい顔族がつけると顔の側面が圧迫される感じがキツいです。
これは多くのVR用カバーや交換フェイスプレートを販売しているVR Coverの交換用フェイスプレートを購入したところかなり改善しました。フェイスプレートのカーブ自体は純正品と大差ありませんが、柔らかくしなるので圧迫感がだいぶ減って快適になりました。

メガネをつけると視野が犠牲になる

視野角の項目で書いたようにメガネをつけるとレンズの距離を離さないといけない都合上視野角が犠牲になりがちですが、専用メガネを使うことで解決するようです。
ぼく自身は裸眼で問題ない視力があるため使っていませんが、利用者の評判はとてもいいです。

汗対策

VRゲームは激しく体を動かすことも多いので汗をかきます。汗対策にはヘルメット用インナーキャップが手軽です。
薄手でサラサラしたストレッチ素材でHMDをかぶる邪魔にならず、それでいて汗はしっかりとってくれるのでHMDを汚さず、複数枚用意すれば洗濯しながら常に清潔に使えます。髪の毛がHMDに引っかかるのも防いでくれるので汗をかかない時期でも便利です。

 ベースステーションの固定

ベースステーションを部屋の隅、天井近くに固定する必要があります。ベースステーションには固定用の足とネジが付属しているので、壁や天井に直接ネジを打っていい環境ならそれがベストですが、賃貸などでそうはいかない場合もあるでしょう。
その場合はカメラ用の雲台・三脚がそのまま使えるので便利です。 
フレキシブルな足のある三脚をフックや突っ張り棒に巻きつけて固定したり、クリップ雲台・クランプ雲台で棚や突っ張り棒に固定するのが定番です。
和室の場合は長押を利用して固定するのもいいですね。

 

総評

コントローラーの耐久性、ベースステーションの騒音など問題点もあるものの総合的には現状ベストに近い体験ができるPC用VRHMDかと思います。
すでにRiftやViveを利用していてアップグレードしたいと思っている人には素直におすすめできます。
ただ初めてのVR機器購入なら、Indexは約14万円と高額な上にハイスペックなゲーミングPCが必要なので、まずは5万円でスタートできるOculus Questがいいかもしれません。スタンドアロンでも遊べますし、PCに繋げばPC用VRゲーム(Oculus,SteamVR)も遊べます。
最初からIndexコントローラーが使いたい、Viveトラッカーを利用したフルトラをしたいなどの目的があるならIndexがよいですが、「VRゲームを遊ぶ」という目的ならOculus Linkも正式対応されましたし、Questでも十分に遊べます。

VALVE INDEX VR キット

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  • 発売日: 2019/05/21
  • メディア: Video Game
 

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